私は何故、三成を好きになってしまったのだろうか。
例えば幸村様みたいな人を好きになれば良かったのではないか。
確かに三成は顔は良いが性格に難有りだ。
その点、幸村様は性格も良い。明らかに恋をするならば幸村様の方が断然良いのに。
「少しぐらい誉めてくれたっていいじゃない!」 「それよりもさっさとこれを左近の所へ届けて来い」 先刻から私はもう何度も左近様の所と三成の所を行き来している。 何やら大切そうな物だったり如何でも良さそうな物だったり、何でもである。 本来ならばこれは私の仕事ではない。だというのにあれもこれも全て私がしている。 大体、渡す物があるのならばせめて一度にまとめてくれれば良いのに一つ一つ渡しに行かされるのが余計に腹立たしくて仕方ない。 「私は三成の侍女じゃないんだけど!」 「だがおねね様に俺の手伝いをするよう言われたのだろう?」 「そ、それは…」 私が三成に言われてこのような事をしているのはおねね様に三成が忙しそうだから手伝ってやってくれないかと言われたからだ。元々、私はおねね様の侍女なのだ。きっとおねね様は三成とは幼い頃からの付き合いで、気兼ねなく接する事が出来るからという理由で私にそう言われたのだろう。 それにしたって、三成にも小姓や侍女が居る筈なのに彼等は使わず私にだけこうして仕事を押し付けてくる。 これは嫌がらせか何かだろうかと疑いたくなるぐらいに。 私は何故、三成を好きになってしまったのだろうか。 こんなにも嫌な奴なのに私は三成が好きでこの空間に居られる事が嬉しい。 だがこの扱いだ。やはりこれは嫌がらせで、三成は私の事なんて嫌いなのではないだろうか。 そう思うと一気に悲しくなってきて、俯いて黙ってしまった。 すると、、と三成に名前を呼ばれて手に何かを握らされた。何だろう。不思議に思ってそれが何かと確認する。 …………おにぎり? 「それでも食え。お前の事だ、そろそろ腹が減っただろう」 「まるで私がたくさん食べるかのような言い方を…っ」 「要らぬのか?」 「……要ります、欲しいです」 それでいいその方がらしい、と言って三成が何やら可笑しそう笑う。 いつもは嫌な奴なのに、こうやって、時々優しくて、私は結局三成が嫌いになれず更に好きになる。本当は優しくて不器用なだけって分かってるんだけど。だからこそ、嫌いになんてなれないのかも知れないなあ。 たったこれっぽっちでしあわせです |