「…さっきから、何のつもり?」

皆がもう帰ってしまい、二人きりになった部室で。 ジロリ、と冷たい目ではそう言い放った。 しかしそんな目で見つめられている当の本人・切原は相変わらずにこにこと微笑んで、
両手をの目の前に突き出している。

「何って、プレゼントですよ」
「プレゼントって…何の?」
「嫌だなぁ、俺のに決まってるじゃないッスか〜」

何で私が赤也にプレゼントを渡さなきゃいけないの。 不思議に思って切原を見つめていると、切原の顔から笑顔が消えていった。 え、今日って何か大切な日だったっけ?

「…先輩、今日って何月何日でしたっけ?」
「えーと…9月25日?」
「…何の日か分かりません?」
「や。まったくもって全然」
「………やっぱり」

いいんスよ、先輩にとって俺ってそんな存在だったんですね、とか よく分からない言葉を切原は呟き始める。 そうは言われても、には何の事だかさっぱり分からない。 9月25日って何の日だったか。 こんなにも切原が落ち込むという事は、切原に関する事なのだろうが。 9月25日…9月25日…9月25日?

「………あ。赤也の誕生日?」
「…思い出した?」
「うん。ごめん、すっかり忘れてた」

酷いッスよ!、と切原はに抱きついた。は引き剥がそうとしたが、流石にこれは自分に非がある為に止めた。 大会があったりとかテストがあったりとか、とにかく色々と大変ですっかりと忘れていた。 しかも切原は今日を楽しみにしていたと思うと、更に罪悪感が募る。

「あー…ごめんごめん。また近い内にプレゼントを用意するからさ、いい加減放してくれないかな」
「絶対に嫌ッス!!」

あーあー、また我儘を言い出したよ、こいつは。 まあ、今回は仕方の無い事ではあるのだが。

「じゃあ、一体どうしろって言うの。私はプレゼントなんて用意していないのよ?」

すると、切原はを放してにっこりと微笑んだ。 …ヤバイ。 何故か直感的にはそう思ってしまった。 こういう顔をしている時、こいつは何を考えているのか分からない。

「俺は先輩が欲しいんだけど」
「却下!」

不満そうな顔をする切原を睨みつけ、は小さな溜息を吐いた。 まったく、いつもこうだ。 ことあるごとにこういう台詞を言う。 許したら何をするか分かったもんじゃない。 多分、否、きっと即お持ち帰りに決まってる。

「えー…」
「知らない。私は普通のプレゼントを買ってきます。以上!」
「俺は先輩が欲しい〜」

はもう一度「知らない!」と言い放つと、鞄を片手に勢い良く部室を出た。 後ろから切原が慌てて「待ってくださいよー!」と言っているが、無視して歩き出した。

(ああもう、赤也の馬鹿っ!!)

身体が熱い。 顔が真っ赤になっていくのが分かる。

(いつもいつもあんな事を言って…どれだけ私が恥ずかしいか分かっていないんだから!)

そんな事を思っていたら、更に身体が熱くなってきた気がした。 あまりにも恥ずかしくなって、はついには駆け出した。

an evryday incident