「俺、のことが好きなんだ」

自分なりの極上の笑みを浮かべてそう言っても彼女は、そう、とだけ言った。 つまならそうな顔をして、あさっての方向を見つめている。

「好きなんだ、のこと」
「それは良かったね。千石にしてはおめでたいことだったんじゃない?」

こっちを見る気配はない。 どうでもよさそうな声が返ってくるだけである。 酷くそれがもどかしいが、当の本人は気にしていないらしい。

「…ねぇ、ってば聞いてる?」
「失礼ね。聞いてるわよ」

なら、何で君はこっちを見てはくれないのかな。 君はどうして俺にそんなに冷たいのかな。

「好きだよ。俺、本当に本当に、が好きなんだ。愛してる」

すると、突然と方向を変えて、こっちを見てきた。 口元に笑みを浮かべている。 まるで、馬鹿らしい、とでも言うかのようなものである。

「嘘吐き」

他の子にも言ってるじゃない、その言葉。私だけに対しての言葉じゃないじゃない。そう言って彼女はまた笑った。

嘘吐き少年